平成7年度は初年度として人間の経路選択行動を経験的知識を利用したファジィ推論モデルとしての記述を中心に研究を進めた。なかでも多様な推論過程の記述に対応したモデル表現形式を導出した。 1)都市道路網の道路利用者の経路選択現象を把握するために簡単な経路選択に関する意識調査を行った。このとき三角型ファジィ数(TFN)を利用して、交通情報の記述が容易となった。また意識データを用いて、運転者の意思決定要因の抽出、言語表現での意思決定過程の記述が可能となった。 2)ファジィ推論を用いた経路選択モデルを作成した。交通情報との関連を考慮した経路選択要因を抽出し、言語表現された経路選択に関する知識をルール群として構成した。マムダニ法を基本とするT-ノルム・非ファジィ化に関する検討結果が整理された。本研究では、これらの成果を参考として基本モデルを作成した。 3)ファジィ推論モデルの実用的な改良を試みた。経路交通量などの推計効率を向上させるために、「簡略推論法」による演算の高速化を図った。この手順によれば、既存構成ルール群や前件部の表現方法に変更を生じないため、推計精度を低下させず、モデル構造の簡略化が可能であることがわかった。ここでロジェットモデルなど既存モデルに対するファジィ推論モデルの特徴を整理した。 4)人間の段階的な意思決定過程を表現できる「多段推論」モデルを作成した。特にニューラルネットワークとの結合(ファジィニューロモデル)により多経路洗濯の記述が可能となり、交通情報による運転者の状況認識、これらを統合化した経路選択の意思決定過程が段階的に表現できる。その意味で、交通情報による運転者行動変化を具体的認知表現から検討することができることがわかった。 5)これらのモデル改良手順を経て、経路選択現象の記述に適するファジィ推論モデルの形式を導出するとともに、経路選択に関する交通情報の影響程度について考察し、今後の研究方法についての検討を行った。
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