本研究は、街路空間における自動車・歩行者・自転車に対する空間の割り当てを適正化することによって、安全・快適性が高く、かつモビリティにも配慮された街路空間を創出するための手法を提案することを目的とするものである。本年度は昨年度の成果を踏まえて、以下の成果を得た。 1)街路分類、ならびに街路の問題箇所抽出を昨年と同様の手法を用いて行い、これらの手法の適用性をさらに高めた。検討対象としては、京都市都心部の街路とした。 2)街路の評価は、空間占有状況といった利用実態からだけでなく、街路空間の本来のあり方にという視点からも検討することが不可欠である。このような街路空間に対する評価は、評価する人々の属性、すなわち、一般の街路利用者であるか沿道施設関係者であるかなどによって異なるであろうし、また街路利用者であっても利用交通手段によって大きく異なることが予想される。そこで、このような街路との関わり方を考慮して抽出した被験者に街路を評価させることとし、AHP法の適用を念頭に置いて評価実験を実施した。この実験結果を用いてAHP法に基づいた分析を行い、街路構成要素等に関するウェートを算定した。 3)上記の分析結果を用いて、対象街路に関する種々の代替案を評価し、望ましい代替案の作成方法について検討するとともに、対象街路における具体的な改善案を提示することができた。この改善案は交通サ-キュレーションの観点からみても、妥当であることが確認されている。 4)以上のようにして、街路空間再配分が街路の改善に有効である区間に対して、街路空間改善代替案を作成する手法を確立することでできた。
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