脱燐・脱窒を行う下水処理場の機能をシミュレートできるモデルを開発し、流入水質に対応した最適運転操作法を確立するために、本年度は以下の点について検討した。(1)脱燐・脱窒操作と関連する下水性状の特徴及びその季節的変動パターンを明らかにする。(2)生物反応モデル(Activated Model No.2)中のパラメータ値を得る。(3)同モデルによるシミュレーションを実行するための計算プログラムを開発する。 下水性状の特徴及び季節的変動を測定するために、平成7年6月より月に一度、一日のコンポジットサンプルを採取して流入下水の性状、特に有機物の分類を行った。その結果、流入下水の有機物組成の各成分比率は濃度が変化しても比較的一定であった。一方、返送汚泥の有機物組成比率、特に硝化菌や燐蓄積菌の含有量は運転条件によって大きく変動することが明らかとなった。なお、流入下水の水温が20℃付近で安定していたために、流入下水水質の季節的な変動及び処理場における有機物、窒素、燐の処理特性には顕著な違いは認められなかった。下水中の燐の存在形態の測定結果より、全燐に占める溶解性燐酸塩の割合が非常に小さく、燐の放出・取り込み速度に顕著な差異は認められなかった。燐の放出・取り込み速度は処理場のエアレーション量に大きく依存することが明らかになった。下水処理場の沈殿池及びエアレーションタンクにおける炭素(有機物)、窒素、燐の物質収支とその存在形態の測定結果は、回分実験で得られた生物反応速度(硝化速度、脱窒速度、燐の放出・取り込み速度等)と高い相関性を示した。 一方、54個の化学量論係数を含む上記の反応モデルに酸素吸収量を表現する項を加え、回分過程における酸素、各態有機物、窒素、燐等の19成分の濃度変化をシミュレートする非定常計算プログラムを開発した。好気、微好気及び嫌気条件下におけるシュミレーション結果は、実験結果と同じくエアレーション量の効果が大きいことを再現した。
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