研究概要 |
PPB以下の厳しい飲料水基準が農薬などの有害成分に課される中で,凝集・沈澱・ろ過を基準とした従来型のシステムに活性炭吸着装置を付加する場合のみならず,膜利用型浄水処理や,渇水時の水の循環再利用に際しても低分子有害成分に対処する手段として活性炭吸着は不可欠となりつつある。しかし,固定層で使用している活性炭の再生までの寿命が何年あるのか?または現在使用中の活性炭の残余寿命はいくら位か?といった重要な課題が未解決で残されている。 研究の目的は,未使用と使用中の固定層活性炭の寿命を評価する簡便迅速なプロトコルを考案することにある。具体的には処理前の原水と未使用もしくは使用中の活性炭,除去対象成分を与えて,数少ない短時間の実験を経て活性炭の寿命を評価する手法を,活性炭が未使用と使用中の場合に分けて考案する。 今年度得られた成果を列挙すると次のようである。 使用中活性炭の残余寿命予測については: 1) パイロットカラム活性炭装置を1年半通水実験した.その間,有害物質を微量濃度で通水し層内濃度分布の測定し,活性炭に吸着しているファウリング物質の蓄積の影響を検討した.微量成分の除去は主にファウリング物質の蓄積によって支配されていることが明らかとなった。 2) 活性炭に吸着したファウリング物質の脱着試験を行っている. 新活性炭の寿命予測については: 1) 様々な吸着速度律速と吸着平衡関係を仮定した時の相似率の誘導を行い,スケールダウンした装置で短時間で寿命予測が可能なことが理論的に証明された。 2) 相似率に基づくマイクロカラム実験と実規模カラムの除去率変化の比較を行った.その結果,活性炭に粒度分布がある場合は比表面積径を代表径として相似率が設定されることを示した. 3) 固定層活性炭の寿命は,自然界に存在している有機成分の内,低分子成分によって主に決定される.
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