生活排水の新奇な高度処理法として、生物学的処理と膜を組み合わせた膜分離活性汚泥法の開発が進んでいるが、膜分離法の課題は膜汚れの制御にある。本研究では、膜汚れ制御の基礎的な課題として、膜汚れ成分のキャラクタリゼーションと膜汚れ成分と膜との相互作用因子を解明することを目的とした。 (1)膜汚れ成分のキャラクタリゼーション 生活系排水処理に用いたセラミック膜およびそれを種々の方法で洗浄を行った膜について、SEMおよびEPMA、反射型FTIRなどの表面分析を行い、膜汚れ成分のキャラクタリゼーションを行うとともに、洗浄による効果をスペクトル変化から検討を試みた。SEMによる観察結果から、洗浄によって表面付着物は容易に除去されるが、膜の透水性を改善するためには、膜細孔内部の汚染物質の除去が重要であることが指摘できた。 (2)膜に対する溶質の吸着特性 代表的な膜高分子であるセルロースアセテートを高速液体クロマトグラフィーの固定相として、溶質の保持特性から膜に対する溶質の吸着特性を評価する方法の開発を行った。低分子量の非電解質有機化合物の保持特性から、疎水性相互作用が主たる因子であり、さらにカルボニル基やフェニル基による特異的な相互作用が指摘できた。糖類などの親水性に高い化合物は、吸着しないことが確認された。一方、アミノ酸などの電解質はpHの影響を強く受けることに加えて、等電点付近でもセルロースアセテートに対する親和性は低いものであった。さらに、フェニル基を有するアミノ酸でも特異的な相互作用が小さいことが指摘された。
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