膜ろ過法における膜汚れ現象は溶質の膜への吸着が要因となるため、基礎的な課題として膜素材に対する種々の溶質の吸着特性を明らかにする必要がある。本年度は、従来から検討を行ってきたセルロースアセテート以外の膜素材として、精密ろ過(MF)膜に用いられているアルミナと塩素化ポリエチレンを対象とした。これらの微細粒子をふるい分けて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のカラムに充填し、従来と同様に溶質の保持特定について検討を行った。 アルミナにはアルコール類およびベンゼンなどの有機溶質は吸着しなかったが、2価カチオンおよび長鎖アルキル基を有するアンモニウムイオンがわずかに保持される傾向が認められ、弱いカチオン交換機能を有することが示された。 塩素化ポリエチレン(PE)カラムでは、極めて低い溶質濃度でしか測定ができず、UV検出器で測定可能な芳香族化合物についてのみ検討を行った。なお、移動相に水を用いた場合には保持が大きすぎるため、メタノール/水系の移動相とした。セルロースアセテートの場合と同様に、保持比の対数(吸着量の指標:log k′)とオクタノール/水分配係数(log K_<O/W>)との間に直線関係が認められ、吸着は疎水性相互作用に支配されることが示された。また、o-terphenylのような非平面性分子は保持が小さいことから、保持は表面吸着によることが示された。 PEの保持特性を代表的な疎水性固定相であるODSの保持特性と比較するために、表面積基準の分布係数を求めた結果、PEの吸着量はODSより100倍程度大きいことが示された。ODSが水溶媒系では疎水性有機物に対して優れた吸着剤であることから考えれば、PEにはより吸着し易く膜汚れを誘起しやすいことが示唆された。
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