1995年度の研究において明らかになった点を列記すると次の通り。 1.藻類の凝集と阻害に関する実験的検討 (1)走査型電子顕微鏡(SEM)による観察とエネルギ分散型X線分析によって、硫酸アルミニウム(Alum)とPACの凝集効果の違いを不溶性アルミニウムの架橋現象の強さから確認できた。なお、藻類フロックのSEM観察のためには、凍結低真空乾燥法が簡単でしかも有用な方法であることが確認できた。 (2)藻類のライフサイクルでは定常期、死滅期におけるTOC成分の生産かつ紫外線吸光度成分が多く、それが凝集剤のアルミニウムと多く結合して溶解性アルミニウムになること、PACはAlumに比較して溶解性アルミニウムが生成しにくいことが明らかになった。なお、塩素処理した場合のPACのこの溶解性アルミニウムを少なくさせる効果については検討を要する。また、他の藻類種についても検討が待たれる。 2.針状珪藻の急速ろ過実験によるろ過閉寒防止のための検討 (1)アステリオネラのような藻類のろ過効率は、結合体の場合には高いが、結合が壊れて単体になると低下する。また結合体では、同一の抑留量に対して発生する損失水頭が大きくなる。 (2)ろ材径と針状珪藻の長さの比は、抑留の特性に大きな影響を与えるので、この比がろ過閉寒防止のためのろ層構成を考える上で有用となる。 (3)ろ材厚(L)をろ材径(d)で割った無次元値(n=L/d)は、ろ材径に相当する厚さのろ層がn層あることに近似でき、ろ層厚さを設計する上で重要な指標となりそうである。
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