研究概要 |
強い有機物質汚濁を受けている原水として近隣の多摩川表流水を原水とした.本原水の有機物濃度は高いが,濁度と生物分解性は低くいので研究に適していた. マグネティックスターラ駆動のプラスチック製クロスフロー膜分離モジュール(径75mm)を用い,真空ポンプと受液タンクを用いた定圧減圧ろ過とし,受液タンクはタイマーにより定期的に排出した.流束の測定は吸引圧は3種類とし,各圧力につき粉末活性炭を添加したものと添加しない場合の比較を行った.原水は添加系と非添加系の2種類とし,共通の貯留槽よりチューブポンプにより膜モジュールに供給し循環させた.濁度の影響を知るために,貯留槽をエアレーションした場合と,しない場合についても実験した.原水が減少した時に貯留槽の水を入れ替えた.実験は3回行い,継続時間はは1.5ヵ月から2ヵ月であった. ろ過を開始すると,流束は流束に低下し,じょじょに安定してくる.膜の抵抗値の劣化は,膜差圧が大きいほど著しく,低差圧のろ過抵抗は安定していた.膜差圧の如何を問わず安定期の流束には大きな違いはなかった.膜が閉塞するまで継続した初期の実験では,閉塞までの積算ろ過量は低差圧の方がむしろ大きくなった. 粉末活性炭を添加した系の抵抗値は無添加系よりやや低いが顕著な差は見られなかった.TOCの除去率は添加系が当然大きくなった.濁質濃度の影響は見られなかった.濁質を沈降させない場合の方がろ過抵抗が低く,濁質が凝集し粒径が大きくなったためと考えられる. 未使用膜,使用済みの膜,粉末活性炭,および濁質の圧縮係数は,すべて0.6近傍にあり,差圧を大きくしても流束が比例して高くはならない.膜表面に堆積した被膜は高い差圧により圧密されて強固になるため剥離が難しく,むしろ抵抗値が増加する.差圧を変えても流束が変わらなかったのはこれらの理由によると考えられる.
|