1995年兵庫県南部地震においては、構造物の倒壊により5500人あまりの犠牲者が発生するに至った。どのような構造物の、どのような崩壊パターンが、建物内の人間に生命の危機を及ぼすのかを明らかにすることは、今後の都市防災を考えるための最重要課題である。本研究では、1995年兵庫県南部地震による人的被害発生実態に関する調査及び分析を行い、1993年釧路沖地震など、既往の地震で得られた知見とも照らし合わせて建築計画的対策のあり方を探った。 1.1993年釧路沖地震における住民アンケート資料及び負傷者対象のアンケート資料の分析 室内環境と人的被害危険度の関連性について分析した。住宅においては、部屋別の用途・設置家具・家具の固定状況により地震時室内散乱度が異なり、それらが負傷危険度に直接影響することが明らかになった。 2.兵庫県南部地震における人的被害関連資料のデータベース化 建物を単位として建物被災度と居住者の死傷・救助活動を関連づけるデータベースを構成した。その分析の結果、住宅の構造種別により倒壊時の死傷危険度(Lethality)が大きく異なることを明らかにした。また、消防の救助活動記録をもとに、時間軸・構造種別による救助内容の分析を行い、生存救出率が地震後の日数及び経過時間により急激に低下すること、救助に要する労力(人数と時間)は耐火造集合住宅の場合、木造住宅の2-3倍を要することなどが示された。
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