研究概要 |
本年度の研究では,暴露12年及び7年の実大暴露試験体よりコンクリート中への塩分浸透過程を把握した。 まず,外部の塩害環境とコンクリート中の塩分量の関係を明らかにする為に,飛来塩分量とコンクリート表面を介してコンクリート中に浸透する塩化物イオン量(浸透塩化物イオン量)の関係を定式化した。そして,その提案式が,暴露12年間及び7年間の実測結果を表す事を確認した。なお,この飛来塩分と浸透塩下物イオン量関係は,以下に記述する塩化物イオン拡散解析の境界条件となる。 コンクリート中への塩化物イオンの拡散解析は,従来のコンクリート表面濃度を推定し,ディレクレ型の境界条件として与える方法ではなく,流束である浸透塩化物イオン量を与えるノイマン型の境界条件とした。この方法により,コンクリート中に蓄積している塩化物イオン量(蓄積塩化物イオン量)と浸透塩化物イオン量の関係が物理的に明確になる他,洗い流し効果も解析に考慮できる。また,本拡散解析モデルは,中性化に伴うと考えられる内部での塩分濃度ピーク形成を考慮し,中性化している範囲と,未中性化範囲で見かけの拡散係数を使い分けている。更に,未中性化範囲では,時間経過に伴う拡散係数値の低下を考慮している。 本研究で提案するコンクリート中への塩化物イオン拡散解析を用いて,さまざまな飛来塩分環境下におけるコンクリート中の塩化物イオン濃度分布を推定し,実測結果と比較したところ,本解析は実測結果を良く表すことが確認された。
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