超高層建物の柱-はり溶接接合部が風荷重によって繰り返し応力を受けたときの低サイクル疲労耐力を実験的に調べた。用いた試験体は柱フランジにはりフランジをK形開先を有する完全溶け込み溶接、及び部分溶け込み溶接とした十字形のモデル供試体であり、溶接の種類は炭酸ガスアーク溶接とサブマージアーク溶接である。試験体は溶接のままのものと溶接部をグラインダー仕上げをしたもの及び母材の3種類である。載荷方法は正弦波による完全両振りひずみ制御であり、本実験によるひずみ振幅は0.2%〜2.4%とした。本実験研究より得られた知見を列挙すれば以下の通りである。 1.完全溶け込み溶接の処理方法の相違、即ち溶接のままの継手と余盛を処理した継手では、後者は疲労亀裂発生時期、及びその耐力は改善されるが破断耐力には両者に有意な差はなかった。 2.完全溶け込み溶接の溶接のままの継手の疲労亀裂発生耐力は母材のそれの10%〜20%、余盛部を処理した継手では20%〜30%であった。また、破断耐力は両者とも母材の20%〜30%あった。 3.部分溶け込み溶接における炭酸ガスアーク溶接とサブマージアーク溶接の溶接方法による相違では、疲労亀裂発生耐力及び破断耐力とも両者の間に有意な差はなかった。これらの両耐力はそれぞれに対応する母材耐力の30%〜40%であり、完全溶け込み溶接継手の耐力の1.5〜2.0倍であった。 4.破面の電子顕微鏡による観察より、繰り返しひずみ振幅値が約1.5%以上ではデンプルを形成する延性破壊に、約1.5%以下ではストライエションを形成する疲労破壊に分かれた。 今後は実大の柱-はり溶接接合部の実験を行い、本実験結果と併せて疲労設計指針を確立する予定である。
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