研究課題/領域番号 |
07650686
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辻本 誠 名古屋大学, 工学部, 教授 (90115600)
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研究分担者 |
江本 哲也 市邨学園短期大学, 生活文化学科, 講師 (90269663)
河野 守 名古屋大学, 工学部, 講師 (60170205)
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キーワード | 人命リスク / リスク認知 / 指数法則 / 受認限界 / 変動指標 |
研究概要 |
本研究の目的は,『(死亡)リスクの許容限界を、リスクが経時変化した後一定に落ち着いたところに求める』とするC.Starrの先駆的研究をはじめとした内外の数多くのリスク認知研究の成果を踏まえながら、社会生活上の種々の人命リスクおよびその変動を定量的に同定し、それらのリスク値・リスク変動が市民にどのように認知されているかを明らかにすることである。環境刺激の認知に関しては、例えばいくつかの環境科学の研究において、人間の温冷感は環境温度の絶対値よりも温度変化に強く影響されている領域のあることが見いだされており、本研究ではリスク認知がある時点でのリスクの絶対値ではなくリスクの経時変化に強く影響を受けるとの仮説をもって分析を行った。具体的には、疾病、事故・災害による死亡リスクを生活上関わった時間当たりの死亡率という形で各種公的統計資料に基づいて同定し、さらにその経時変動を明らかにした。一方それらのリスクに対する心理評価を、死亡者数および危険度を回答するアンケート調査により求めた。このアンケート調査は1988年と1995年の2度のわたって行ったものであり、これらの結果の比較により心理評価の経時変動も併せて分析できるよう計画されたものである。死亡リスクと心理評価を重ね合わせることで以下の点が明らかとなった. ・各死因に対する死者数の推定と危険性の評価は疾病、事故・災害を問わず強い相関関係をもち、さらに、死者数を小さく推定する死因は安全であり、大きく推定する死因は危険だと評価している、 ・死亡リスクの経時変動に対して、疾病の場合はリスクが減少している死因を安全と評価している一方、事故・災害ではリスクが減少している死因を危険と評価しており、疾病と事故・災害では危険性の心理評価が異なる傾向にある、 ・過去25年間の死亡リスクの経時変動が全体的に小さくなりつつある中で、2回のアンケート調査より得られた心理評価は、各死因の危険性をより高く判断するよう変化してきている。
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