研究概要 |
建物における空調負荷の平準化を目的として天井プレナム内空気対流式躯体蓄熱システム(天井プレナム内に設置した空調機室内ユニットからの冷温風を夜間はプレナム内に吹出し循環させてコンクリート製床スラブに蓄熱し・昼間の空調負荷を軽減するシステム)を提案し,実験ならびにシミュレーションにより本システムの快適性・省エネルギー性,経済性について検討した。具体的な研究実績は以下のとおりである。 1.実験棟による冬季実験およびシミュレーション:昨年度の事務所ビル実測調査では,業務上の制約等から運転条件が制限され,また詳細な室内熱挙動の把握が困難であった。本年度は九州大学キャンパス内の実験棟(地下1階,地上2階,延床面積109m^2,鉄筋コンクリートパネル式プレファブ建物)を対象に,冬季に躯体蓄熱を行った場合の室内環境改善効果,夜間電力利用によるコストメリットを明らかにし,本システムの熱ロスについても定量的に検討した。また,蓄熱時間の違いが床スラブの蓄放熱量や室内熱環境および空調負荷に及ぼす影響についても検討した。さらに,実験棟を対象に年間のシミュレーションを行い,躯体蓄熱システムの消費電力量は無蓄熱システムの約18%増になるが,電力料金(従量料金)では26%削減が可能なことを明らかにした。 2.一般事務所ビルにおける躯体蓄熱の有効性:一般事務所ビルを対象にシミュレーションを行い,夏季は吹出し温度16℃で10時間蓄熱が適当であること,冬季はインテリアでの躯体蓄熱運転が昼間の冷房負荷を増大させるため躯体蓄熱はペリメータゾーンに限定すること,冬季においてペリメ-夕方位に関係なく吹出し温度32℃で3時間蓄熱が適当であること,南面ペリメータの冬季躯体蓄熱効果は認められないことなどを明らかにした。
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