研究概要 |
空調負荷平準化を目的として天井プレナム内空気対流式躯体蓄熱システム(空調機室内ユニットからの冷温風を夜間はプレナム内に吹出し循環させて床スラブに蓄熱し,昼間の空調負荷を軽減するシステム)を提案し,実測調査・実験ならびにシミュレーションにより本システムの快適性,省エネルギー性,経済性について検討した。 1.事務所ビルの実測調査:本システムを神戸市の新築事務所ビルに採用し,夏季の室内熱環境および除去熱量を測定した。足元が冷えるなどのクレームもなく室内のPMVは快適域に収っている。本方式のエネルギー消費量は無蓄熱空調方式のそれを僅かながら上回るが,夜間割引料金の適用により約30%のランニングコスト低減が見込める。 2.実験棟による冬季実験およびシミュレーション:実験棟(RCパネル式プレファブ建物)を対象に,冬季に躯体蓄熱を行った場合の室内環境改善効果,夜間電力利用によるコストメリットを明らかにし,本システムの熱ロスについても定量的に検討した。また蓄熱時間の違いが床スラブの蓄放熱量や室内熱環境および空調負荷に及ぼす影響についても検討した。さらに実験棟を対象に年間のシミュレーションを行い,躯体蓄熱システムの消費電力量は無蓄熱システムの約18%増になるが,電力料金(従量料金)では26%削減が可能なことを明らかにした。 3.一般事務所ビルにおける躯体蓄熱の有効性:一般事務所ビルを対象にシミュレーションを行い,夏季は吹出し温度16°Cで10時間蓄熱が適当であること,冬季はインテリアでの躯体蓄熱運転が昼間の冷房負荷を増大させるため躯体蓄熱はペリメータゾーンに限定すること,冬季においてペリメータ方位に関係なく吹出し温度32°Cで3時間蓄熱が適当であること,南面ペリメータの冬季躯体蓄熱効果は認められないことなどを明らかにした。
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