道路交通騒音が問題となる都市部の道路沿道にはマンションやアパートが建ち並び、その数は増加の一途をたどっている。これらの集合住宅では、隣家や上階との関係から道路交通騒音に対する反応も複雑になるのではないかと考えられる。また、著者らがこれまでに蓄積してきた戸建住宅についての知見をそのまま集合住宅に適用できるかを検討しておく必要がある。本研究は札幌において戸建住宅と集合住宅が混在する4地区で社会調査を行い、両者の社会反応の相違について検討した。調査対象者は選挙人名簿を基に20〜70歳の成人の中から、各住戸当たり1名をランダムに抽出した。全調査対象者は429名で、そのうち260名から回答が得られ、有効回収率は60.6%であった。内訳は戸建住宅が169名中116名で回収率68.6%、集合住宅は260名中144名で回収率55。4%である。調査項目は80項目である。暴露-反応関係による分析で、騒音の不快感と排気ガスの不快感について、大変不快と答えた人の割合はいずれも戸建住宅で大きく、集合住宅と戸建住宅の%Very annoyedの差は明らかであった。また、パス解析による初期パスモデルの分析では「戸建住宅or集合住宅」の要因で、間接効果が全要因中最も大きかった。この間接効果は排気ガスの不快感や住宅の振動の不快感に最も大きな直接効果を及ぼし、その他にもTV妨害、休息妨害、覚醒に統計的に有意な直接効果を及ぼし、それらを介して騒音の不快感に間接効果を及ぼしていることが明らかにした。これは、集合住宅はRC造で中層の建物であるために、自動車の通過による建物の振動が少ないことや上階の居住者は直接排気ガスを暴露されるわけではなく、あまり排気ガスを不快に感じていないためではないかと思われる。来年度、九州でも同様の調査を予定しており、気候差を含めて戸建住宅と集合住宅の社会反応の違いを検討し、これらの知見を検証する。
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