本研究は気候の異なる北海道と九州で戸建住宅と集合住宅居住者について道路交通騒音に関する社会調査を行い、次の2点を明らかにすることを目的としたものである。1)北海道と九州の気候差の騒音の不快感への影響。2)集合住宅と戸建住宅での騒音の不快感構造の違い。平成7年度(札幌)と平成8年度(熊本)の調査対象者をあわせると戸建住宅では全対象者712名、回答者494名で回収率は69.4%、集合住宅では全対象者1045名、回答者603名で回収率は57.7%であった。調査項目は80項目である。暴露-反応関係による分析で騒音の不快感について、大変不快と答えた人の割合は札幌、熊本ともに戸建住宅で大きく、集合住宅と戸建住宅の%Very annoyedの差は明らかであった。これは集合住宅では戸建住宅より近隣騒音に気がつくと答えた回答者が多く、相対的に自動車騒音の不快感が小さくなったと考えられる。しかし、暴露-反応関係には札幌と熊本での気候差は見られなかった。また、集合住宅と戸建住宅での騒音の不快感についてパス解析した結果、気候差の要因は騒音の不快感に小さな直接効果しか及ぼしておらず、上述した暴露-反応関係の結果も考慮すると、騒音の不快感への気候差の影響はないと思われる。集合住宅と戸建住宅で共通して騒音の不快感へ有意な影響を及ぼしている要因は内生変数では窓を開けられない不満感、排気ガスの不快感等で、外生変数では騒音の敏感さ、L_<Aeq>と道路の安全性であった。このように集合住宅と戸建住宅において暴露-反応関係については戸建住宅で%Very annoyedが大きかったものの、騒音の不快感構造では双方に大きな差は認めらず、これまでの研究で蓄積されてきた戸建住宅に関する知見を集合住宅に安全側で適用することができると考えられる。また、騒音の不快感を心理的に低減させる方策等を提案した。
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