本研究は、人間が平面図を読むという心的な過程を、空間イメージの表像と関係づけながら、認知的に明らかにすることと、平面理解のモデルを計算機上に構成し知的CADのプロトタイピングを行い認知モデルからの応用の道筋をつけることを目標にしている。 住空間の知識構成を抽出することを目的として既に開発したBlank Plan試験法を遂行するための実験ソフトを全面改訂した。Blank Planとは通常の平面図から空間を構成するのに必要な壁・柱以外のすべての表示を取り除いた白図面であり、被験者は発話しながらその図面がどのような室を表わしているのかを解いてゆく。これまではモノクロ2値の線画のBlank Planを用いて実験を進めていたが、材料のテクスチャや色彩、調度、陰影など色情報を表示できるようにカラーバージョンに書き改めた。この際、背景に写真などの画像情報も表示できるように工夫した。 さらに、平面図の認知過程ではなくけっいそのものの認知過程をプロトコル実験で捉えるために、新たな実験用ソフトを開発した。これは、作画過程を時刻とともに記録することのできる簡易的なCADである。被験者は、住宅設計課題を与えられ、このツールを用いて設計を行なうが、通常のCADとは異なり、被験者は線を描画するのではなく矩形の壁と線状の壁、窓、ドア、開放部、室名というオブジェクトをディスプレイ上に配置してゆく。実験遂行時にはこれらオブジェクトの生成、消去、移動、が時刻歴とともにコンピュータ内部に記録され、その時のプロトコルと対照させて設計過程の観測情報となる。 以上のツールを用いて予備的なプロトコル実験を行なった。空間の知識と表象は、平面図を読むときや住宅平面を設計するときにイメージを随伴して形成されるので、その知識表像の形式をプロトコル分析法によって抽出することが可能になった。
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