本研究では、人間が平面図を読むという心的な過程を空間イメージの表象と関係づけて認知的に明らかにしながら、平面理解のモデルを計算機上に構成する試みを行なったものである。 (1)Blank Plan試験法〈通常の平面図から空間を構成するのに必要な壁・柱以外のすべての表示を取り除いた白図面を被験者は発話しながら解いてゆく〉を考案し、Blank Plan試験を遂行するためのパソコン用実験ソフトを作成した。 (2)実験結果から住宅平面に関する人間の知識のパラメータを抽出し、Blank Plan問題解決プログラムをSmallTalk 言語を用いてプロトタイピンブした。これは基本的にはリニアな探索プログラムなので改善の余地は大きいが、日本住宅のBlank Plan問題を解くことができる。 (3)Blank Planの背景に写真などの画像情報も表示できるように改訂し、Blank Image実験プログラムを開発した。これは、作画過程を時刻とともに記録することのできる簡易的なCADである。被験者は設計課題をこのツールを用いて遂行設計を行なう。通常のCADとは異なり、被験者は線を描画するのではなく矩形の壁と線状の壁、窓、ドア、開放部、室名というオブジェクトをディスプレイ上に配置してゆく。実験遂行時にはこれらのオブジェクトの生成、消去、移動が時刻歴とともに記録され、その時のプロトコルと対照させて設計過程の観測情報となる。 (4)以上の試験法により、住宅平面を設計するときにイメージを随伴して形成される知識表象の形式をプロトコル分析法によって抽出することが可能になった。
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