両国の地方中心都市である豊橋市、木浦市、蔚山市の3都市ごとにランドサットTMデータを用いて土地被覆分類を行い、市街地形成と緑地環境の実態を把握した。今年度の研究成果は以下の3点に集約される。 1.次の手順による経年変化比較を前提とした土地被覆分類手法をパソコン上で定式化した。まずアフィン変換を行い、次に2時点の画像データ間で回帰分析より一方の画像をベースに他方の回帰推定画像を求め、その後画像の平滑化、濃度補間を行い、これら前処理を施した画像データを用いて最尤法による土地被覆分類を行った。 2.分類結果の精度は、500m程度のメッシュスケールでは妥当な経年比較が可能である。しかし1ピクセル単位では現実にはほぼありえない変化がみられ、この点は今後の課題である。木浦市については現地調査を行い、トレーニングサンプルの精度を向上させるとともに、高密度市街地と低密度市街地の分類が可能となった。 3.分類結果の主題図から、これまで定性的に指摘されてきた日韓両国の市街地と緑地分布の実態を客観的に把握することができた。さらに分類結果を区域・地域指定との関係で分析し、以下の知見を得た。 (1)韓国の2都市は市街化区域内の一人当たりの緑量は豊橋市に比べ少ないものの、都心に近い郊外にまとまった緑地が保全され、かつ市街化区域内の緑被率も高めに保たれている。 (2)一方豊橋市では市街化区域内の一人当たり緑量は最も多いものの、緑被率はどの用途地域においても韓国の2都市よりも低く、都心に近いところではまとまった緑が少ない。 このような対照的な結果の背景には、両国の土地利用規制制度の相違がある。今後これらの結果を踏まえて緑地環境の保全に配慮した市街地形成を規制誘導する土地利用制御システムの方向性を検討する必要がある。
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