対照的な市街地形態をもつ日本と韓国の地方都市の市街地と緑地環境変化の実態を、ランドサットTMデータを用いて定量的に比較分析し、両国の土地利用規制制度との関連を把握した。今年度はとくに主成分分析を用いた土地利用変化抽出法を試み、また土地被覆分類結果を補完するためNVIによる植生分布特性の把握も行った。以下に主に今年度得られた成果・知見をまとめる。 1.ポスト分類比較法及び主成分分析を用いた都市内土地利用変化抽出を試み、一定の限界はあるが、これまで不可能だった日本と韓国の都市の土地利用変化の定量的比較分析が可能であることを示した。 2.土地被覆分類結果とNVI分布特性、都心距離、小学校距離からは、韓国の方が都心や日常生活空間に近い所に緑地が多く存在することを定量的に示し、空間スケール別緑被率とジョイン理論による緑の集塊性の分析から、両国の市街地形態と土地利用規制制度の相違が緑のまとまり具合に大きく関わっていることを具体的に示した。 3.区域・地域指定との関連分析からは、(1)韓国の市街地は、市街化を計画的に図るべき区域にその85%前後が存在し、かつ緑地全体の25%程度がその区域内に存在する。一方豊橋市の市街地は、市街化を抑制すべき区域にも35%程度が存在し、市街化区域内の緑地は10%以下に低下している。(2)植生活性度からみると、韓国の方は市街化を図るべき区域と抑制すべき区域でNVI特性に明確な差異がみられるが、豊橋市では類似したNVI特性をもつ地域が多く、植生活性度の点で韓国の2都市よりも相対的に評価が高いことが確認された。(3)緑被率の要因分析からは、3都市とも用地地域指定と都心距離が緑地分布に大きく関わっており、この傾向は経年的により強くなっていることが示された。
|