本研究では、前年度行った調査研究成果の整理・分析を行いつつ、今後「木の文化」を継承発展させていくための地域住宅生産システム、特に川上と川下のリンケージ、つまり「林住リンケージ」の可能性について検討を行った。その結果得られた知見をまとめると以下のようになる。 (1)木造住宅生産システムの現状と課題 1)木工・職人等の技能者不足:技能者不足に対して、機械道具や加工機械の浸透が進んでいる。しかし、その事がメーカーが大量生産する住宅と、質的・デザイン的な差をなくし、経済性で優位なメーカー型住宅を地域木造住宅生産システムに浸透させる結果となっている。個々が有する技能・技術のアピール(大工・職人の意識の向上、社会的認識)、各企業および業界による人材育成、創造・創作の機会の創出が必要である。2)中小零細木工・工務店の設計力不足:職人設計による住宅デザインは、経験に基づくパターン化されたデザインに落ち着く傾向がある。そのため住まい手が持つニーズを把握せず単調なデザインがなされる事が多い。住まい手の住宅に対する意識向上、木工・職人とデザイナ-が協働するシスデムの構築が課題である。 2)地域に根差した住宅生産システム、および林住リンケージの現状と課題 中小零細な企業が集まる林業・製材業は、外材の輸入による木材の価格低下等により、経営困難な状況になっている。また、木材流通では、木材の規格化が進んでいる。現在、組合や企業がプレカット加工を導入したり、林家と大工・工務店、設計者が協力して、地域産材を積極的に活用しようとする試みが行われているが、今後、都市部・林山地との交流やネットワークの活性化、木材利用の意識向上、等が重要なキ-となると言える。 以上から、今後の研究課題として、林業・製材業から大工・設計者・住まい手といった木造住宅生産における人的・物的リンケージの実践、それと同時に、現在ある木造建築ストックの積極的な活用とそのための技術的開発が挙げられる。
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