本研究は、長年に渡って評価されてきた浮世絵風景画「東海道五十三次」「木曾街道六十九次」を分析対象として、(1)「緑」の要素の配置手法を分析することにより緑化計画の示唆を得ること、(2)景観の構図の典型タイプを導き出すこと、(3)景観設計手法における一般な指標を導き出すことを目的としている。 平成7年度には、樹木の配置手法を分析することによって自然景観における緑化計画の示唆が得られた。 平成8年度は、画面内での「緑」の配置傾向を検討するために、浮世絵風景画を縦9*横9の81メッシュに分割し、オーバーレイ法によって、描かれた樹木の樹種、植生形態、機能について分析し、さらに描かれた樹木の画面内の距離景別分布状況を調べることにより、(1)額縁的機能、片寄せ機能、画面分割機能、連続的機能などの景観構図的な役割があること、(2)中景の緑が横主軸線上に多く描かれることから、重要な構成要素であること、(3)単独樹木よりも林や森などの緑のかたまりが重要な構成要素であること、(4)比較的に緑の少ない東海道では、緑を貴重な景観資源としてとらえ、構図の中心に描く傾向があること、等が明らかになった。
|