本年度の調査では、大分県南部の代表的農村地域である三重町の老人保健施設のデイケア利用高齢者を対象にアンケートおよび訪問ヒアリングを行った。 調査結果から、プライベートな行為と公的行為においてイス坐(洋式)化の推移状況が異なることが明らかになった。 プライベートな行為である就寝・排泄については、身体能力の低下によりベッド導入、洋式化を比較的容易に行っている。特に、排泄に関しては、和便器に容易に取り付けられる洋便器で暫定的に対処している場合が多く、清掃時の困難性や不安定性から来る不安感などの新たな問題を指摘できる。 公的行為である食事・くつろぎについては、家族に合わせる傾向が強く、冬季の暖房設備を特にコタツに頼る部分が大きい農村部では、床坐になることが多い。食事については、板の間の食事室・ダイニングテーブルを所有しながらも、イス坐へ変化する事例は稀であり、この要因を分析し明らかにする予定である。 また、長時間を住宅で過ごす高齢期においては、住宅内での拠点に高齢者の生活が凝縮されている。その拠点について考察すると、拠点を居間から自分専用居室へ変化させた場合、身体能力の低下によるベッド導入の影響により部屋の狭小化を招き、ベッド上でのまたはベッドに影響される起居様式を取ることが確認できた。 今後はさらにこれらの行為の起居様式についての評価、起居様式の変化順序を考察することにより、これからの高齢期における床坐の可能性と限界、さらにはイス坐の受容の仕方の差異を明らかにし、対応策を提示する予定である。 本年度は、地方農村部の調査を行ったが、次年度に予定している地方都市部についても並行して一部予備調査を実施した。
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