高齢期に身体不自由になると起居様式を洋式化するとよいという考え方が定着しつつある。そこで本研究は、地方における都市と農村の高齢者の起居様式の実態を比較しつつ明らかにし、起居様式を尊重した高齢期住居のあり方を見出そうとするものである。 対象は、地方の大分県のなかから都市部として大分市、農村部として三重市を選定し、デイサービス利用者から調査協力の得られた51戸と31戸である。 (1)就寝-ベッドの導入は、和室にも設置が進み、都市部と農村部で大差なく急速に進行しつつある。 (2)食事-イス坐化は都市部では急速に進み、農村部ではイス坐希望がありながら、現状ではユカ坐継続が高い。その原因としては、農村部住宅の台所兼食事室がまだ土間に多く、和室の居間で、家族と一緒にユカ座で食事をする、いわゆる茶の間型をとるためである。 (3)団欒(くつろぎ)-都市部ではイス坐化が進んでいるが、食事ほどではなく、農村部では依然としてユカ坐の継続傾向が強い。くつろぎでユカ坐が継続する原因としては、くつろぎの姿勢としてユカ坐から横臥に移行するスタイルが慣習化し、そのくつろぎ方が生理的にも心理的にも優れ好まれるからである。さらに地方では農村部だけでなく都市部を含め、家族団欒がまだユカ坐が主で、高齢者がそれにあわせることにも起因する。 (4)住生活拠点-高齢期以前及び以後も拠点は、一般に居間に凝縮されているが、加齢に伴い同居家族との関係や身体不自由度の進行から、高齢者専用室ないし寝室に移転されていく傾向がある。その場合都市部ではプライベートな室として、農村部では療養の室としての性格を強めていく。その室(拠点)では起居様式はくつろぎと共通し、都市部ではイス坐、農村部ではユカ坐が中心である。
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