本研究は、提案・開発された多数の地域型住宅モデルが、どのような変容を経て地域の住宅生産システムの中に普及・定着していくのか、その影響と効果に着目している。とりわけ、開発のイニシャティブをとった中央の建築家やそれを地域の中で翻訳し展開した地元設計者および地元の施工者とのコミュニケーションの実態調査を通じて、地域住宅設計者の役割に検討を加えることをねらいとしている。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)地域型住宅モデルの地域適応に関する理論的検討(文献研究、理論研究) 普及理論の検討から地域型住宅モデルの持つべき普及の一般的要件を定性的に明らかにした。住宅モデルが地域への定着をはかるための環境条件を具体的に住宅生産システム問題として展開する必要がある。 (2)全国の地域型住宅モデルの地域への普及・定着プロセスの実態調査(調査研究) 開発・提案された地域型住宅モデルの中で、実際に地域の中に一定量の普及・定着をみた富山県の八尾型住宅、福島県の喜多方型住宅に着目して、その定着プロセスを明らかにした。とりわけ、地域住宅生産のキーパーソンとして設計者の果たした役割の大きいことを示した。また、最近提案のあった群馬県新治型住宅について地域の住宅生産者および居住者調査をもとに今後の普及可能性を検討した。 (3)曲型的な地域型住宅モデルの普及プロセスおける設計者の役割の実態調査(調査研究) 富山県上平村の「克雪住宅」モデルの開発・普及過程の調査・分析を通じて中央の建築家と地元の設計者の協力関係が重要であることを明らかにした。地域性をどのように理解するか、その実現にどのような役割分担があったのかに着目して、両者のコミュニケーションプロセスを明らかにした。
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