本研究では、多種多様な要素のアンサンブルからなる都市景観の特質を探究するために、マルチメディアによる都市景観のシミュレーション・システムを開発し、都市景観を多角的な視点から解読する試みを展開した。 1.都市景観に関する情報の収集 (1)日本の歴史的街並み(海野、近江八幡、丹波篠山など)について、現地調査資料を整理し、新たに文献資料の収集を行った結果、200カ所の街並みに関する情報を体系的に把握することができた。 (2)現代都市の中から3カ所の場所を選定し(新宿、丸ノ内、多摩ニュータウン)、写真、ビデオ映像、音声、図面、地図、文献資料などの情報を収集し、都市景観を多種多様な記号のネットワークとして把握した。 2.マルチメディアによる都市景観のデータベースの開発 (1)200カ所の日本の歴史的街並みについては、マルチメディアによる都市景観のデータベースを完成させた(Macintosh上のHyperCardを利用し、写真1300枚、地図200枚、テキスト60万字程度を集録した)。 (2)現代都市については、ビデオ映像や音声を含むマルチメディアによる都市景観のデータベースの開発を進めた。 Macintosh上のHyperCardをベースにして、Adobe PremiereやMacroMedia Directorを用いて、都市空間の中をウオ-クスルーしながら、仮想現実にも似た都市景観の体験が得られるようにした。 3.都市景観のシミュレーション・システムの活用 シミュレーション・システムを、都市景観の解読、デザイン、景観政策の立案、環境教育など、多様な文脈で活用する方法を検討した。日本の歴史的街並みのデータベースは、CD-ROM化して利用できるようにした。
|