本年度は、滋賀県内の旧東海道全域(大津市・草津市・栗東町・石部町・甲西町・水口町・土山町の2市5町におよぶ範囲)で調査研究を行った。 1)東海道の景観の復元:『東海道分限延絵図』および名所図会類、浮世絵風景画を資料として、街道景観の復元的考察を行い、松並木、常夜灯、橋、高札場、一里塚、家並み、それに遠景の眺望地点について分布の復元を行った。 2)現況景観の調査:以下の3つの視点で調査を行った。(1)街道筋およびその周辺に位置する街道施設(石標、常夜灯、橋、松並木など)の分布と現況 (2)街道沿いの伝統的建造物の所在とその保存度 (3)眺望景観の状況 3)交通路としての旧東海道の現況:草津市内の旧東海道沿線地区について、住民意識調査を実施し、旧街道の自動車路および歩行者路としの利用状況を調査した。(この意識調査では町並み景観に関する質問も合わせて行った。) 以上総じて言えば、旧東海道沿線にはまだかなりよく昔日の面影があり、落ち着いた緑豊かな集落景観の中を行く歩行者路として適当かと思われる部分も多い。大津市内は伝統的町家が多く残っており、他の旧宿場は景観整備を始めている町と旧東海道に無関心な町とで景観に大きな差が出ている。本年度は調査に終始したので、次年度は分析的考察と利活用計画を主眼に研究を進める予定である。
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