本研究は、滋賀県内における旧東海道の歴史的景観の現況の把握、旧東海道の歩行者道としての構成の特質の把握、その交通路としての現況の把握と今後の利用のありかたを考察したものである。 旧東海道沿道における伝統的建造物の保存状況については、大津地域では30〜40%、草津地域30〜50%で、草津では外観を近代的に改造した例が多い。栗東以東は伝統的建造物が多く、栗東および甲西地区60〜70%、土山地区およそ60%である。土山地区では新しい建物で町並みとの調和をはかる和風事例が多い。水口、土山には伝統的町並み景観がある。宿場間の集落では、沿道全域にわたり農家の前庭に和風庭園が形成され、旧宿場以上に良好な景観が見られる場所が多い。明治以後の和風建築は沿道全域で似通っているが、江戸時代・明治初期の建物には、各宿場ごとの形態の変化が見られる。 社寺など、近世の案内記に記載された名所はその殆どが現存し、景観的状況もかなりよい。いっぽう、河川、橋など公共空間内の歴史的景観要素については歴史的景観が失われているが、最近、歴史性を表現する修景が橋で始められている。松並木は殆ど現存しない。 交通路としての調査は旧草津宿でおこなった。旧東海道としての認知は高齢者を除いて一般に低く、道としても余り好まれていない状況である。沿道では自動車通行の利便性を高めることを望む意向が高い。しかし、旧東海道であることの認知を高め、その利用法を沿道景観形成と一体で示した上で、再度意向を確かめる必要があろう。各行政区域ごとに交通路の体系的計画があり、旧東海道の歩行者道としての利用計画の作成は簡単ではなく、今後も検討を続ける予定である。
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