研究概要 |
平成7年度は3年間研究の初年度であり,痴呆性老人専用介護施設を中心に経路探索歩行行動に関する基礎的かつ継続的な調査を行った。選定した対象施設は小規模空間を生活単位とする施設であり,認知水準の低い痴呆性老人が空間認知や経路探索を行いやすく、より有用な知見が得られるのではないかと判断したためである。まず、老人の日常生活行動と問題行動(特に徘徊行動)をタイムスタディによって把握した。次に徘徊行動に関しては、老人の入所後3カ月の行動記録をもとに、徘徊行動を経時別、徘徊経路別、痴呆程度別、ADL別などに分析して、第一段階として当初の研究目的を達成しつつある。また、小規模施設空間における共有便所、自室など目的地への経路探索歩行行動においては、痴呆程度(軽度・中重度)で有意差があること、目的地への到達度は折れ曲がり歩行を伴う場合は極端に低下すること、その際に対象刺激の可視・不可視など視覚条件に起因することなどの基礎的知見を得た。現時点で、平成7年度のデータ集計と考察が完了しており、次年度中に研究成果の一部を学会で発表する予定である。 また、次年度以降の研究対象としては、今年度では十分に確認できなかった視覚条件と経路探索行動の相互関係の検討、空間の習熟度と経路探索行動の関係、徘徊行動の類型化と事例観察調査などを行う予定である。
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