痴呆性老人の専用介護施設で下記の調査を行ったので報告する。 1)徘徊歩行調査 新規開設された痴呆専用施設において、老人の入所後3カ月間の寮母観察日誌を詳細に分析検討した。結果として、昼夜別で徘徊行動の出現頻度が異なり夜間に多いこと、昼夜の環境刺激の多少が徘徊出現に影響を与えうること、徘徊行動の出現頻度には個人差があり常同化傾向がみられること、入所後の時間経過とともに徘徊出現率が一定水準まで低下すること、などが明らかとなった。 2)夜間行動のタイムスタディ 夜間12時間のタイムスタディを行い老人の夜間行動を観察調査した。他人に迷惑を及ぼす問題行動はみられなかったが、便所での排泄外行動、他階の介護空間への徘徊行動、デイルームでの無為行為などが観察された。特に夜間照明された場所での行動発生頻度が多いため、照明などの環境条件が夜間徘徊抑止の有効手段となりうるかの検討課題が残された。 3)探索歩行実験 デイルームから自室への経路探索実験を行った結果、軽度痴呆はほぼ全員が到達できたが、重度痴呆は迷い行動、失見当などで約2/3しか到達出来なかった。到達した場合でも、入口周辺や自室内を覗きこむなどの確認行為がみられるため、領域形成を容易にする私的な環境条件を整備する必要性が確認された。
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