本年度は主として公有賃貸住宅制度と住宅保障について考察を行い、平成7年度の考察結果をふまえ、居住福祉の観点から住宅政策の問題点と今後の課題を明確にした。 1.公有賃貸住宅制度と住宅保障 (1)都市住宅制度の改革によって上海市でも持家助成を行い、住宅の私有化を推進していく方針である。公営住宅の家賃や政策家賃から原価家賃へと移行させ、公的援助は低所得者に対するものなどに限定していく方向である。 (2)住宅難世帯への住宅の最低保障については、低所得層についてのみ家賃値上げや債券購入の際に減免等の補助を行う。今後、住宅の規格と価格は多様化するであろうが、勤労者向け住宅の規格は公的住宅金融の融資条件と関連していくと考えられる。 2.住宅政策の問題点と今後の課題 既成市街地の再開発は、居住者の居住条件改善には一定の寄与をした。しかしこれら居住者への住宅保障は都市中心部の地価高騰に支えられている。住宅保障のためにはより安定した財源確保が必要であり、一般勤労者向けの住宅金融制度の拡充とともに、住宅保障制度の整備が望まれる。 また、都市再開発による既成市街地居住者の郊外団地への大規模な転入や都市流動人口の増加は、治安や居住地管理について新たな問題を提起している。同時に遠距離通勤や転校などの諸問題も発生していると考えられる。町村部においては教育・厚生施設の整備は進んだものの、その質的向上が求められいる。
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