全国一般病院を対象とした緩和ケアへの関心と実施状況のアンケート調査を解析することにより次のことがわかった。告知率の平均は3割程度であり、関心や実施の状況は告知率に最も影響を受ける。患者の「死の準備行動」は告知が前提となると考えられることから、告知への積極性・消極性との関連を加味した現実的な地域計画的対応が必要であることがわかった。また、発症以後療養場所を複数変わる例が多く、充分な情報と必要なケアがあれば、患者・家族には療養場所を選択し、変更する流動性がみられることはわかった。次年度以降の課題として、対象地を絞り一定の地域内における末期患者の流動性を、各病院の緩和ケアの実施状況や告知の状況を踏まえて明らかにする。 次に遺族会の記録および闘病記、看護学の症例研究等を整理した結果、末期患者の生活には便宜上、大きく3つのステージにわけられることがわかった。第一段階は全人的ケアを受けるために、患者とスタッフの情報交換と生活設計を行うオリエンティーションの時期、2番目は自立度の変化をみながら、より安楽に生活を展開するステージ、そして最後は看取りの時期。この時期には家族への精神的援助が強化される。緩和ケア病棟は、告知を前提とし、患者本人の意思による選択が条件となっているものが多く、遺書の準備、残務整理、献体の申し込みなどの社会的な死の準備行動は入院前あるいは入院前期にすませてしまう例が多い。緩和ケア病棟で展開される死の準備行動は、入院後は日々起こる身体状況の低下や、精神的な動揺などに対応するための、肉体的・精神的・宗教的痛みに対応する行動が重要になっていくる。アイデンティティーの確認、生きたことの証明や死の意味を考えるなど、死の準備行動は様々な個性を発揮する、生の確認行為と考えられることがわかった。次年度以降は、このような死の準備行動の分類を明確にし、療養場所との関連を含めた具体的な事例研究を行うこととする。
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