本年度においては具体的な事例研究に着手した。主に遺族に対するヒアリグを行う手法は本研究においては重要な位置を占めるが、記憶にたよるこの手法においては、具体的な死の準備行動を取り巻く諸状況を整理する際に、予想以上に困難を伴うことがわかり、来年度に向けてヒアリングそのものの技術的改善が急務の課題となった。 そこで本年度は、客観的資料を収集することにより力点をおいて資料収集を中心に研究を行った。患者の闘病の状況を時系列的に把握することの出来る客観的資料を収集することを目的として、各医療施設に対してアンケート調査を行った。末期癌患者の数、病状、緩和ケアの提供の状況、ならびに転院の状況を把握した。特に具体的に表れる選択的行動の内、最も重要な行為の1つとして「転院行動」の分析を取り上げた。行為空間の分析をする際、ならびに緩和ケア病棟の地域計画の基本的な資料とする。癌の末期患者の場合、告知の有無に関わらず転院する例が多く、闘病期間が長いことから自宅療養期間を持つ患者も多い。療養の場合は選択の幅は狭いものの、患者や家族による選択の結果であり、今後選択行動の構造の分析を進める。
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