研究概要 |
緩和ケアを必要とする患者は、全国一般総合病院の調査により、数量的に把握することが出来た。病名の告知率とケアプログラムの普及程度に、顕著な相関が見らた。現在「人生最後の場」を、患者が選択できる状況にはなく、緩和ケア病棟、病院、在宅など、療養の場として整備し、選択肢を増加させることが早急に必要である。 次に、緩和ケア病棟で展開される行為形態を把握するために、公共空間の利用状況ならびに、病室の利用形態を、数病棟を対象にして、継続的観察調査を行った。また、観察からはわからない、患者や家族の心情を知るために、闘病手記の分析を合わせて行った。本研究で対象にする死の準備行動は、患者と家族により展開される行為形態全体を包括するものとする。以上の多角的な調査から、患者の生活には大きく分けて3つのステージがあることがわかった。すなわち、スタッフとの情報交換により治療ならびに生活目標の設定を行うオリエンテーションの時期。病棟での生活を展開する時期。心身共に状態が低下する見取りの時期の3つである。時期により病室使用形態が変化することが観察できた。時系列変化を想定することが緩和ケア病棟の計画には不可欠な視点である。特に2つめのステージでは、生活展開のためにコミュニケーション、作業、個性表現、自然とのふれあいなど様々なニーズがある。また日々衰えゆく過酷な肉体的・精神的状況に対応する行為を補助する空間的配慮が必要である。本研究ではいくつかの事例を示すことにより、具体的な提案を行っている。自立度が低い患者が多く、患者による公共空間の利用は非常に少ない。また精神的・肉体的に状況が大きく変動するため、大きな空間や大きな集団への所属は避けられる。コミュニケーション規模を2,3人に想定するのが適当である。 具体的事例を総合的に分析し、行為形態と空間整備の指針を示すことが出来た。
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