長期経過した分譲集合住宅団地における居住者の住まい方変化と高齢者対策地域に永く住み続けるための住まいの条件と利用に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07650732
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 国立公衆衛生院
• 研究代表者: 松本 恭治 国立公衆衛生院, 建築衛生学部, 室長 (30017967)
• キーワード: 親族近居 / 複数住宅所有・使用世帯 / 相対的低水準住宅 / 地域内住み替え / 高密度市街地団地 / 郊外団地 / 高層居住と健康 / 通院率

研究概要

初期の分譲集合住宅団地では、増加しつつある高齢者が永く安心して住み続けられるためのストック改善の管理の対策が早急に必要となってきた。従って本研究は長期経過した分譲集合住宅における住まい方の変化と個人努力や管理組合による改善や工夫等を分析し、対策に資する資料を得ることを目的とした。平成7年度は居住者対象のアンケート調査と高齢者対策を実施した管理組合へのヒヤリングを行った。
居住者を対象に行ったアンケート調査は、(1)団地内・近隣住替えの実態、(2)複数住宅所有と使用変化の実態、(3)親子同居・近居形成・分解の実態、(4)住戸内改善の実態、(5)近隣関係の実態等である。当然ながらこれらは一定程度の期間を経た分譲集合住宅地で見られるものであり、これらを左右する条件として、立地環境、価格、団地戸数規模、団地内の住宅型種類と配分、管理形態、維持保全状況等が上げられた。これら条件を勘案し、調査対象団地を昭和40年代初期分譲団地から4団地(東京高島平、横浜ガ-デン山、千葉高洲、花見川団地)選定した。有効回収アンケート票数は合計1637票であった。
主な調査結果は以下の通りである。
(1)親族近居(徒歩15分以内)はどの団地でも多く、ほぼ1/4の世帯が該当した。これらは郊外3団地では子供世帯の結婚独立、親の引き寄せによって分譲団地内に多く生じたが、高島平では、子供世帯のUターン、兄弟等の引き寄せ生じた場合が多い。(2)複数住宅使用世帯はガ-デン山の12.5%の世帯が該当し、他の3団地はこれを下回った。複数使用世帯が多く見られる団地は狭小住宅が多い場合で、大規模住宅型があってもそれが少戸数の場合であった。様々な規模の住宅型が混合する高島平では住宅の狭さを地域内住み替えで解消する傾向が強く、これらの住宅型配分は親族近居形態にも影響した。(3)地域内住み替え者は比較的世帯収入が高いが、これは地域内住み替えで配偶者の常勤勤務を保障した結果である。さらに地域内住み替え者は地域に友人が多く、管理組合役員を引き受けることの抵抗感も小さい。居住期間が短い範囲内では、遠方から転入した者より、地域内住み替え者の方が通院世帯が少なかった。(4)通院に関する中高層建物比較では、高層居住者の方が格段に通院率が高く、特に60才を越えた男性では中層、高層居住の差が著しかった。

研究成果

• [文献書誌] 江口司津,松本恭治,吉田進一: "長期経過した公的分譲集合住宅団地における居住者の高齢化と住まい方 その1 居住者の高齢化と生活" 日本建築学会大会学術講演梗概集. (計画系). 1193-1194 (1995)
• [文献書誌] 吉田進一,松本恭治,江口司津: "長期経過した公的分譲集合住宅団地における居住者の高齢者と住まい方 その2 住み替えと複数住宅使用." 日本建築学会大会学術講演梗概集. (計画系). 1995-1196 (1995)
• [文献書誌] 松本恭治,江口司津,吉田進一: "長期経過した公的分譲集合住宅団地における居住者の高齢化と住まい方 その3 親族近居の実態" 日本建築学会大会学術講演梗概集. (計画系). 1997-1998 (1995)
• [文献書誌] 松本恭治,江口司津: "長期経過した公的分譲集合住宅団地における居住者の高齢化と住まい方 その1 高齢化のメカニズムと立体居住." 日本公衆衛生雑誌. 42(10). 707 (1995)
• [文献書誌] 江口司津,松本恭治: "長期経過した公的分譲集合住宅団地における居住者の高齢化と住まい方 その2 高齢者のみ世帯の蓄積と親族近居" 日本公衆衛生雑誌. 42(10). 708 (1995)
• [文献書誌] 松本恭治: "分譲集合住宅に対する医療・保健衛生・福祉からの行政施策について-現状と将来の可能性-" 日本マンション学会第4回横浜大会資料集.18-27 (1995)
• [文献書誌] 松本恭治.他: "分譲集合住宅居住者の高齢化と管理問題 マンション管理研究の10年と今後の展望" 日本建築学会, 60 (1995)