前年度の研究成果を踏まえ、本年度はカタルニア・モデルニスモの思潮と様式を体現する建築家Lluis Domenceh i Montanerの研究を中心として、バルセロナの都市史及び同時代の建築家たちの個別研究と並行して研究を遂行した。以下に3つの項目に分けて研究実績の概要を記したい。 1.バルセロナ都市史研究Joan Busquetsによる<バルセロナ-密実都市の都市的展開>(1994)の文献研究を通して、カタルニア建築思潮の背景としてのバルセロナの都市史の正確化の試みを行った。 2.カタルニア モデルニスモと建築家Lluis Domenech i Montaner研究 lgnasi Sola-Moralesの<バルセロナの世紀末のモデルニスモ建築>(1992)、Lluis Domenech i Girbauの<ドメネク・イ・モンタネル>(1994)、Catalina Cantarellas らによる<建築家ドメネク・イ・モンタネル>(1996)、更に1990年の彼の展覧会カタログ等の文献研究を通してLl^-1.Domenechの著作、論稿を網羅的に概括し、それに基いて彼らの多様な活動との関連を明らかにした。 3.カタルニア建築思潮(19c-20c初頭)の建築家たちの個別研究 Jose Llinasの<ジュゼ・マリア・ジュジョル>の文献研究を通して、建築家Josep Maria Jujol i Gibertの創作態度に関して新しい知見を加えることができた。また、建築家Antoni Gaudi i Cornetについて彼の作品における幾何学的形態に着目し、その形態制作を追実験的に研究することによって彼の創作態度に関して新しい知見を資することができた。 以上の研究成果の幾つかを日本建築学会に口頭発表した。 次年度は建築家Ll.Domenechの建築論論稿に着目して、それらを読み通すことを通じて彼の創作態度とカタルニア・モデルニスモの建築思潮の本質の一端について、日本建築学会論文集に発表する予定である。
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