研究概要 |
1.平成7年度は、主として研究課題に関わる資料の入手と整理に意を注いだ。現在、その資料を鋭意検討中であるが、本研究とテーマをまったく同じにする資料はもちろんないので、容易に展望は開けず悪戦苦闘中である。 2.注目している建築物Jean Boucherは、1927年から1932年まで、パリに16棟の凡庸だが典型的なアール・デコ様式の建物を建てているが、その経歴については未だ不明である。同時代に活躍した同姓同名の彫刻家とは、恐らく別人であろうと思われる。Boucherは、どの作品も他の建築家と共同で設計しており、その共同設計者にはGeroges Leclerc, Leon Barriquand, P. Soulard, H. Robin, Marcel Gateau, A. Chaureau, Andre Gendrel, M. Lefeurre, Paul Delaplancheといった人がいる。そして、その共同のあり方は時代によってかわるのではなく、地区によってかえられているものと思われる。つまり、地区ごとに同じ共同者と設計するわけである。 3.Jean Boucherはアール・デコ様式の市街地集合住宅の一典型をつくり、各地区の共同設計者と共にそれにわずかに変形を加えた作品を具体的な敷地につぎつぎと建てていったものと思われる。つまり今日の住宅メーカーの集合住宅の設計統括者的な立場にあった人であるが、このような建築家の存在は、アール・デコのもつ大衆性を考える上で甚だ興味深い。
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