研究概要 |
既に平成8年3月に,ルイス・カーンの主要17住宅の変容過程の意味の分析,および1950年代の7住宅の諸特性の分析とその解釈を終え,引き続き後期の作品の解明が目論まれた。現在(平成9年3月)論文の執筆中である。主題解明は,図面,草案群の徹底的な読み取り作業を前提とするが,分析は以下のアスペクトに沿ってなされる。 (1)作品生成の変容を徹底的に調査し,ありのままに記述し変容の事態を提示する。 (2)フォームを形成する諸要素の「結合」の仕方に基づき,変容過程を区分。 (3)区分せれた各段階の差異をあきらかにし,最終案におけるフォーム成立の契機とみなせる改変を列記する。 さらにフォーム成立を担う特異なエレメント(エントランス,ポーチ,コート,階段室,サ-ヴィスクラスト,暖炉,窓など)を指摘し,それらの変容の詳細をあきらかにし,エレメントの意味について分析する。 (4)解明された住宅作品のフォームの意味について,カーンの建築思想に基づき,本研究の主題である「作品世界」の解釈を試みる。解釈にあたっては,現象学,存在論などの諸学の成果を広く導入し,独自の建築論的立場から論証される。 また分析にあたっては,模型制作による検証とコンピュウタ-による3種のダイアグウラムの作成を通して変容過程の把握に努めている。 (今後の研究の課題) 明らかにされたカーンの作品世界の特性と近代の主要住宅s作品の特性との比較分析。 住宅とは何か,住まうとは何かという問いを通して,建築の本来の意味をあきらかにし,あわせて,近代・現代の諸問題についての反省を試みる。
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