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1997 年度 実績報告書

信仰空間の歴史的変容過程に関する実証的研究-江戸時代における黄檗派寺院の場合-

研究課題

研究課題/領域番号 07650741
研究機関九州大学

研究代表者

山本 輝雄  九州大学, 工学部, 助手 (10038002)

キーワード黄檗派寺院 / 信仰空間 / 坐禅 / 繞仏 / 廊下 / 廻廊 / 禅堂 / 仏殿
研究概要

本年度(最終年度)の研究は、「通路空間の配置計画」に関する変容過程の実証的研究である。本山萬福寺の伽藍構成の変容を伴うような天王殿の左右の廊下の付設は宝永6年(1709)に始めて出現した後に起った歴史的な転換点であることを文献資料などを用いて実証的に説明することができたと考える。同時期に一挙に新伽藍が計画し建設されていた甲府の永慶寺においては伽藍中枢部分が方形の通路空間を当初から計画されていたことやこの永慶寺の伽藍建設に萬福寺お抱え大工棟梁である秋篠家が係わっていることも分かった。次に、横山秀哉博士が既に指摘してある黄檗派寺院から始まったと考えられる「坐牀をもつ土間式本堂」と僧侶の生活空間である庫裏とを繋ぐ「接続する廊下」の遺構を尋ねて全国の黄檗寺院を深し廻った所、東海地方を中心にまだ幾つかの建築遺構を深し出すことに成功したので、これらを調査して研究報告を日本建築学会東海支部で発表する予定である。この調査の過程において所謂黄檗天井をもつ大層貴重な白岩寺の江戸時代の「坐牀をもつ土間式本堂」も見つかった。こうした「接続する廊下」が黄檗派寺院に必要な理由としては『黄檗清規』から導き出される黄檗禅に特有な坐禅修行の一つの形式と関連があることを指摘した。『黄檗清規』から読み取れるもう一つの修行である「繞仏」については「接続する廊下」や堂宇の前面一間吹き放し部分を連ねて構成される、例えば長崎の唐寺・福済寺の伽藍のような「廻廊」がこれに対応したのであろう推定を提示した。その他の諸問題として、従来から研究してきた「大雄宝殿の荘厳化」、「確立前の寺院についての建築的性格」、「本堂としての定着」についても一定の成果を上げたことを述べた。最後に、今後に残した課題として「江戸時代における他派の仏教寺院における信仰空間との比較」に取り組みつつある現状をも報告した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] 山本輝雄: "聖寿山崇福寺(長崎市所在)の開山堂兼禅堂について" 日本建築学会九州支部研究報告. 第36号・3. 353-356 (1997)

  • [文献書誌] 山本輝雄: "江月寺本堂(福岡県所在)と黄檗禅について" 日本建築学会九州支部研究報告. 第36号・3. 357-360 (1997)

  • [文献書誌] 山本輝雄: "天王殿と禅宗寺院の門" 日本建築学会東北支部研究報告集. 第60号. 9-12 (1997)

  • [文献書誌] 山本輝雄: "普門寺(高槻市所在)禅堂の建築史上の位置付け" 日本建築学会近畿支部所見報告集. 第37号・計画系. 817-820 (1997)

  • [文献書誌] 山本輝雄: "萬福寺(宇治市所在)における方形の通路空間の成立について" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 1997年度大会<関東>. 117-118 (1997)

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公開日: 1999-03-15   更新日: 2016-04-21  

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