Fe-0.3mass%C-3mass%Mo合金を真空溶解し、1250°Cで50時間均一化処理を行った。熱処理試料とした後、オーステナイト化し、400-700°Cの範囲で等温保持した。熱処理後は光顕観察によって、フェライトの生成量を測定し、TTT曲線を定めた。530°C以下ではフェライトの生成速度は速く、degenerate ferriteが観察された。550-570°Cではフェライトの生成速度は急激に遅くなり、ベイ温度(TTT曲線のくびれ)は〜560°Cと推定された。570°C以上では変態速度は温度の上昇とともに大きくなり、炭化物とフェライトの微細な混合物が生成した。 電顕ではdegenerate ferriteは等軸粒の集合体のように見える。これらの等軸粒は珊瑚や樹木のようにもとは一個の結晶が枝分かれしたものであり、成長(界面移動)が強く抑制されることによって生ずると考えられている。 界面移動を抑制する原因の一つとして、合金元素の界面偏析がある。FE-TEMにより、フェライト/オーステナイト界面の組成分析を行った。ばらつきはあるものの、平均濃度の2倍以上のMo濃度が観察された。Mo濃度は保持時間とともに増加する傾向が見られた。 Moの偏析が起こると、自由エネルギー(変態駆動力)の一部がMoの拡散に費やされ、成長が抑制される。熱力学と拡散律速の界面移動の理論により、Moの偏析量が一定と、時間とともに単調に増加する場合の成長挙動をシミュレートする方法を考察した。今後、定量的な解析を行う予定である。
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