本年度はCu_3AuおよびCuAu(配合組成)合金原子クラスターを真空蒸着法により作製し、それらにおける規則原子配列、欠陥構造および規則-不規則変態の特徴を高分解能電子顕微鏡観察と電子回折により調べ、構造ならびに相変態に及ぼすサイズ効果を検討した。 真空蒸着後直ちに773Kで1時間焼鈍後のCu_3AuおよびCuAu合金膜は共にナノメータスケールの孤立した粒状で、その全体からの電子回折図形は共にfcc単相であることを示した。Cu_3Au合金微粒子を553Kで1時間加熱すると、電子回折図形にはL1_2型規則構造特有の反射が明瞭に現れた。およそ10nm径の粒子には逆位相境界も観察された。それらの規則反射は773Kまでの加熱中に消失した。これらの結果はCu_3Au合金微粒子がバルクと同様に規則-不規則変態を起こし、結晶構造や欠陥構造の点でもバルクと同様であることを示す。しかし、{100}規則格子面に対応する格子縞は約4nmを下限にそれ以下の粒子には観察されなかった。また、規則-不規則変態温度、T_c、はバルクのそれよりおよそ90K低いことがわかった。CuAu合金微粒子を523Kで1時間加熱すると、その回折図形にはL1_0型規則構造特有の規則格子反射が明瞭に現れた。それから得られた軸比、c/a、は0.94で、バルクのCuAu合金の値、0.926、にほぼ一致した。しかし、(001)格子縞が観察された合金粒子の最小径は約6nmであった。また、CuAu合金微粒子のT_cはバルクのそれよりおよそ55K低いことがわかった。 以上、本研究によりCu-Au合金のA1→L1_2およびA1→L1_0規則化にはそれぞれある臨界サイズが存在すること、また、合金原子クラスターの規則-不規則変態温度、T_c、はバルクと比べて数十K以上も低いことが明らかになった。今後はこのようなサイズ効果をもたらす要因をコンピュータシミュレーションにより検討する。
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