研究概要 |
手持ちの多結晶Ti-Mo合金による熱処理,高温引張変形,変形後試料の切り出しと研磨(補助金による新規購入備品による)処理および光顕・電顕観察による実験は予定通り進めることができた.その成果は研究論文の一部に活用された.特筆すべき成果は,(1)変形帯(バンド生成物)の中が加工軟化をうけ,この現象を惹起させる原因はω→β"への逆変態であることがほぼ分かった.(2)相変態を伴う変形帯の形成は冷間圧延でも現れることが分かった.(3)クラックの発生は変形帯(バンド生成物)に沿って発生・伝播することが明らかとなった.(4)詳細な結論を得るために単結晶の作製から試みたが,その単結晶中の酸素濃度が異常に高いものであることが分かったので,再び多結晶素材の溶製・加工依頼から始めることになり,現在発注中である.納品後単結晶作製から試みる. なお,Ti-Mo合金におけるω相の役割をTi-Ni合金の変形誘起相変態によるマルテンサイトバンドの塑性変形及び局所変形(ないしは破壊前駆体)に及ぼす役割との比較をするために阪大超高圧電顕センターの電顕内引張変形その場観察を試み成果を上げつつある. 一方,ω相の電顕格子像のシミュレーションにより,ω相のコメンシュレーション(整合)度の時効処理時間依存性と加工度依存性を推定し,変態・逆変態過程の評価法の確立を目指すことを行っている.変形帯の形成はβ中に分散する楕円状β"の弾性相互作用により発生するものと見なされるので.β相中のω相,β"相がβ相より強いか弱いかをDV-Xα法によるボンド次数からまず判断し,次に硬いもの又は軟らかいものを幾何学的に並べたときの弾性相互作用を有限要素法又はマイクロメカニックスで評価するスキームを検討している.
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