研究概要 |
電顕観察を中心とする実験は予定通り進めることができた。その成果の一部は研究論文に活用された。研究概要は以下のようである。 1.β型Ti-Mo合金における時効ω相の形成は硬化と脆化を伴うことが知られていたが,過時効(約1年)では硬さは低下するのにω相のサイズ及び脆さはそのままであることが分って来た。そこで二段時効によってω相からα相への遷移状態での内部微細構造と延性との関係を調べることになった。a)ω→α変態を伴わなくとも脆いまま硬さは低下する。b)126時間の2段目の時効で小さいα相の析出をみるが,この状態で変形すると変形誘起の針状α相が束状で発生し延性を示すようになる。c)β相より直接α相を析出させた状態では,上記b)より強度及び延性ともに劣ること。d)以上のことよりω相の周囲での歪み場が延性を支配していると考えられる。 2.遷移状態における両相の周囲の歪み場を収束電子線回折法で計測可能な大きさのω相の析出状態を実現すべく単結晶合金を用いて熱処理に種々な工夫を凝らして努力しているが,実現すべき析出状態がいまだ達成されていない。 3.Ti-Ni合金についての引張りその場電顕観察では,塑性変形領域でもマルテンサイト(二次マルテン)の形成が弾性域で形成されたマルテンサイト(一次マルテン)を基盤にして増殖していき,二次マルテン同士の切り合いが顕著な局所変形を起させ破壊前駆体へ導かれるようである。 4.{332}変形双晶は本質的にはα"型マルテンサイト変態であることが原子モデルのシミュレーションで明らかになった。 5.Dv-Xα法により,種々な構造(β,β",α,ω)についてのクラスターのボンド次数を計算し,それらの強度比較が可能となりつつある。
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