研究概要 |
低温アルカリ型燃料電池の酸素電極に使用されるカーボン材料に対し,電極性能の向上を目的として酸素プラズマ処理を行い表面改質されたカーボンの過酸化水素分解能力,電気伝導度,ぬれ性などの特性評価を行い,それらが電極性能にどのような影響をもたらすかを検討した.基質カーボン材料には市販のアセチレンブラック(ABと略記)を用いた.プラズマ処理は直流グロー放電による処理装置を考案・試作して行った. ABに対し酸素プラズマ処理をした結果,次のことが分かった.電極反応の重要なファクターとなる過酸化水素分解反応速度は処理により増加した.また,ABの水蒸気吸着量も処理出力の増大とともに増加し,ぬれ性が増すことが分かった.しかしながら,電気伝導度は処理出力の増大に伴い低下した.これは処理により導入された酸素を含む官能基の生成による表面パイ電子の減少やエッチング作用によって,AB粒子によって形成されているいわゆるストラクチャーが破壊・切断したと推定した.X線光電子分光分析とアルカリ吸着実験とから処理により導入された含酸素表面官能基は酸性官能基でフェノール性ヒドロキシル基,カルボニル基,カルボキシル基などであることが分かった.酸素プラズマ処理したABを原料とする酸素電極の電流-電位曲線から,酸素の電気化学的還元はプラズマ処理により著しく改善されることが分かった.これは処理による過酸化水素分解能の増大が,酸素電極反応の促進に寄与したこと,適度のぬれ性が反応場を増加させたことなどによると考えている.酸素電極反応については回転リングディスク電極法による解析を進めており2,3の知見を得ている.なお,現在,無電極放電の可能な誘導形プラズマ装置を設計・試作しており,これを用いるカーボン材料へのプロセシングを進めて行く計画も立てている.
|