本研究では炭酸ガスの固定化を念頭におき、適当な焼結助剤を添加することによってCaCO_3の焼結体を低温かつ常圧下で作製することを試みた。まず焼結助剤・焼成温度・雰囲気などを変えた際にできる焼結体を組織観察などにより評価した。その結果、焼結助剤としてLiFおよびLi_2CO_3が非常に効果的であることを見いだした。次にLiFを用いた焼成温度の異なる焼結体について、SEMおよびTEMによる組織観察・粒径測定、線収縮率、相対密度、硬さ試験などの評価を行なった。これらの結果から525℃から550℃の間に著しく焼結が進行していることが分かった。しかしそれ以上の温度による焼結体は手触りが荒くなり、硬さも減少していく傾向がみられた。過度の粒成長が起こったと考えられる。また空気中および炭酸ガス雰囲気におけるそれぞれ525℃、575℃での焼結体のXRDを行なった。その結果、525℃での焼結体は両雰囲気において出発原料と同一の組成であった。一方、575℃での焼結体からは両雰囲気からCaF_2およびLi_2CO_3が微量に検出された。さらに空気中雰囲気からはCaOとCa(OH)_2も検出された。CaOの検出により空気中雰囲気による575℃焼結体では熱分解が起こっているものと考えられる。さらに焼結の際に生じる液相の組成をCaCO_3の単結晶を用いたモデル実験により検討した。その方法として、まずCaCO_3の単結晶に焼結助剤のLiFを挟み込み、炭酸ガス雰囲気において575℃で焼成し、焼結体の粒界モデルを作製した。そしてSEM・EPMA・TEMを用いて接着面の微構造を解析し、焼結のメカニズムを解明した。このモデル実験において液相には30μm前後のCaF_2の球状組織と、CaCO_3とLiFの共晶組織が存在していることが分かった。また、DTAを用いCaCO_3-Li_2CO_3-CaF_2の三元共融点を求めた。
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