研究概要 |
本研究は、先進複合セラミックスの高靱化機構の解明を目的として,数100μm程度のき製に関する『き裂進展抵抗(マイクロRカーブ)』評価法を確立することを目的としている.本年度は以下の実績をあげている. (1)標準的な多結晶アルミナ(粒径4μm)のマイクロRカーブをControlled Surface Flaw試験法を用いて測定した.その結果,圧痕近傍の残留応力を研磨によって除去するにつれて,見かけの破壊靱性は一定値に収束し,微粒の多結晶アルミナには,上昇型Rカーブが存在しないことを明らかにした.また,この結果は,前年度,構築した破壊力学モデルによる理論解析の結果とも一致した。 (2)前年度,検討した多結晶窒化ケイ素(粒径0.8μm,アスペクト比3.3)よりも,柱状晶組織の発達した多結晶窒化ケイ素(粒径0.7μm,アスペクト比4.5)を先進複合セラミックスの一例として,本評価法を適用して上昇型マイクロRカーブを測定した.その結果,前年度と同様に上昇型マイクロRカーブが評価でき,柱状晶組織が発達すると,ブリッジング応力が増加することを明らかにした. (3)先進複合セラミックスのもう一つの例として,多結晶正方晶ジルコニア(粒径0.8μm,単斜晶の体積分率15%)のマイクロRカーブ測定を行った.その結果,見かけの破壊靱性の研磨量依存性に減少傾向が認められなかった.これは,相変態強化による残留応力の影響が非常に大きく,圧痕のみの残留応力のように圧痕の約3倍まで研磨しても除去できなかったためである.すなわち,窒化ケイ素などのcontact shielding機構と異なり,zone shielding機構の材料に,この評価法を適用するためには,process zone wake内での残留応力に関する正確な見積もりが必要であることがわかった.
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