研究概要 |
1.エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)の希土類塩(Nd,Eu,Gd,Er塩)を押し出し成形法により溶融反応により合成することに成功した。具体的には希土類塩の酸化物、炭酸塩、酢酸塩をブラベンダー成形機により、減圧下、180〜200℃で溶融混練し合成した。 2.得られたEMAA-希土類塩の配位構造を、IRスペクトル、UVスペクトル等で詳細に検討した結果、Nd,Eu及びGd塩では8配位、またEr塩では6配位構造をとっていることが明らかになった。 3.走査型示差熱量計(DSC)を用いて、上記EMAA-希土類塩の転移挙動を調べた。全てのEMAA-希土類塩において50℃及び90℃付近に一次転移がみられた。低温域(50℃付近)の吸熱ピークは我々が提案しているイオン会合体の秩序-無秩序転移に、高温域のピーク(90℃付近)はポリエチレン域の結晶域の溶融に対応した。ここでEr塩ではポリエチレンの結晶化が著しく阻害されており、これはEr塩の配位構造に関連すると思われた。 4.Nd塩のIRスペクトル、Nd,Er塩のFar-IRスペクトル及びNdのUVスペクトルの温度による温度による変化を調べた。IRでは秩序-無秩序転移温度(50℃付近)に配位構造の変化があった。 5.中和度の異なるNd、Gd、Er塩の誘電緩和及びNd、Er塩の動的力学測定を行った結果、各試料にミクロ層分離が起きていることを見出した。 6.以上のようにEMAAの各種希土類塩(Nd、Eu、Gd、Er)が中和度を増すとミクロ層分離を起こすことを見出した。これは配位構造さらにはイオン-イオン相互作用が関係しておりこの点の究明は今後の課題である。
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