本研究はエチレンアイオノマーのイオンドメイン形成を支配する因子を明らかにしてアイオノマーの物生制御・高性能化への指針を得ること及び新しい機能発現の可能性を探ることを究極の目的として行ってきた。得られた成果を以下にまとめる。 (1) ESRスピンプローブ法を用いることにより、Zn (II)塩アイオノマーのイオンドメイン中のイオン基の局所環境の温度変化に関して、また吸湿したエチレンアイオノマー中及び水溶液中のイオン基の水和状態及び運動状態に関して、新しい知見を得た。 (2) Mn (II)-アミン錯体アイオノマー及びCo (II)塩アイオノマーにおいて、新しい機能である酸素吸着特性と錯体構造との関係を明らかにした。 (3)エチレンアイオノマーの三価希土類塩の合成にはじめて成功し、その構造ならびに諸物性を調べた。また、希土類(III)塩と一価金属塩、二価金属塩との異種金属塩二成分ブレンドアイオノマーの試作とその構造及び物性の評価を行い、ブレンド効果と呼べるいくつかの興味深い現象を得つつあり、現在さらに検討を行っているところである。 (4)側鎖にイオン基の代わりに多分岐アルキルエステルを導入し、ガラス転移温度や結晶化度に対する効果をDSC、誘電測定等から検討した。さらに、ポリジメチルシロキサンとのブレンドを合成し、相溶性やガス透過性を検討し、このブレンドが高い酸素透過性を有することを見出した。 (5)側鎖としてかさだかいイオン基を導入し、イオンドメイン形成に与える効果をDSC、X線回折、誘電及び動的力学緩和測定等から検討した。
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