研究概要 |
高温度下で使用可能な構造用材料であるケイ化モリブデン(MoSi_2)は,耐酸化性,耐食性および高融点(2030℃)といった優れた特性を有しているが,破壊靭性値K_<IC>が小さいという欠点がある.そこでMoSi_2の脆性を改善するため,2モル%のイットリア(Y_2O_3)を含むジルコニア(ZrO_2)を添加した各種組成の複合材料を熱間静水圧プレス(HIP: 1400℃-2h-196MPa)を用いて作製し,機械的特性を評価した.複合材料中のZrO_2(2Y)粒子(粒径0.23μm)は正方晶であり,MoSi_2(粒径1.8μm)との反応は認められなかった.添加量の増加(0→40モル%)とともに密度は97.1→99.0%に増加し,硬度は10.2から15.0GPaに向上した.K_<IC>は2.5から約2.5倍の6.0MPa・m^<1/2>へと著しく改善され,また強度も616から1034MPaと1GPaを超える高強度材料が得られた.さらにMoSi_2をWSi_2に置きかえたWSi_2/ZrO_2(2Y)系の複合材料も同様のプロセスで作製した.但し,WSi_2の融点(2164℃)を考慮しHIP焼結は1500℃で行った.焼結中にWSi_2の1部はW_5Si_3と非晶質のSiに分解した.添加量の増加とともに密度は増加し(98.6→99.4%)かつWSi_2の結晶粒径は4.0から1.7μmへと減少した.K_<IC>は2.5から約2.7倍の7.0MPa・m^<1/2>へ,また強度は456から1011MPaへと2倍以上の向上が認められた.機械的特性が向上した理由は,準安定正方晶相として均一に分散させた(科研費にて購入した遊星ボールミルを使用)ZrO_2(2Y)粒子の変態強靱化と密度の向上に起因している.
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