本研究はα単相域での加工により結晶集合組織を発達させた上で、α_2+γ二相域で熱処理することによって、ラメラ組織の配向を制御することを目的として行われたものである。本年度はα域での加工条件を確定するため、Ti-41mol%Alを対象に1473Kで歪速度と歪量を変えて、動的再結晶率の変化と集合組織の発達度を調査した。その結果、歪速度1.0x10^<-4>s^<-1>で最も集合組織が先鋭化すること、動的再結晶率は真歪-1.0でほぼ100%になること、真歪が-1.2を越えると歪量を増加させても集合組織は大きく変化することはないことが分かった。そこで、α単相域での変形条件を147K、歪速度1.0x10^<-4>s^<-1>、真歪-1.2と定めた。この変形の後、二相域で熱処理したところ、α単相域での加工組織を反映したラメラ組織が形成された。この組織はラメラ界面が板面と35°をなす点では前年度までの結果と大差はないが、配向の集積度は著しく増加した。 上述のラメラ界面と板面のなす角度をより小さくし、他者が単結晶状の試料について延性と強度のバランスがよいと報告した組織に近づけることを目的に、二相域での加工を試みた。二相域での加工条件の吟味が不十分なために、先鋭な配向の集積を実現するには至らなかったが、この方法によって、ラメラ界面と板面との角度を10°以下まで制御できる可能性が確認された。また、変形の拘束条件を変えることがラメラ界面の配向制御に有効であることも判明した。次年度はこれらの成果をさらに発展させ、ラメラ界面が板面にほぼ平行に配向した素材を製造するプロセスが確立できるものと思われる。
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